

コロナ禍は私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。その中でも、人と人との出会いのあり方は劇的に変化しました。特に、マッチングアプリの世界は、この未曾有のパンデミックによって、利用者の心理や行動、そしてアプリそのものの進化に大きな影響を受けました。本稿では、心理学の視点から、コロナ禍で変化したマッチングアプリ事情を掘り下げていきます。
物理的距離が生み出した「心理的距離」への欲求

コロナ禍で私たちは物理的な距離を保つことを余儀なくされました。「ソーシャルディスタンシング」という言葉が示すように、人と対面で会う機会は激減しました。この物理的な距離は、多くの人々に「心理的な距離」を縮めたいという強い欲求を生み出しました。
人間は、本質的に社会的な生き物であり、他者とのつながりを求める欲求(所属欲求)を持っています。マズローの欲求階層説においても、生理的欲求や安全の欲求が満たされた後には、所属と愛の欲求が上位にきます。コロナ禍による外出自粛や在宅勤務は、この所属と愛の欲求を満たす機会を奪いました。
その結果、人々はオンライン上でこの欲求を満たそうとしました。マッチングアプリは、まさにこのニーズに合致するツールでした。気軽にメッセージを交換し、ビデオ通話で顔を見ながら話すことで、物理的な距離を超えて、心理的なつながりを感じることができたのです。コロナ禍以前は「実際に会うためのツール」という側面が強かったマッチングアプリが、「心理的なつながりを育むためのツール」へと、その役割を大きく変えたと言えるでしょう。
「見せかけの自分」から「ありのままの自分」へ

コロナ禍以前のマッチングアプリでは、プロフィール写真や自己紹介文は、いかに自分を魅力的に見せるかに重点が置かれていました。旅行の写真、趣味に打ち込む姿、友人とのパーティーの様子など、キラキラした日常をアピールすることが重要視されていました。これは、社会心理学でいう「印象管理」の一種です。他者からの評価を高めるために、意図的に自己を演出する行動です。
しかし、コロナ禍は私たちから「非日常」を奪い、「日常」を突きつけました。在宅勤務、自粛生活、マスク生活…。華やかなイベントや旅行の機会が減り、多くの人自分の「ありのままの日常」と向き合うことになりました。
この変化は、マッチングアプリのプロフィールにも反映されました。在宅で過ごすリラックスした様子の写真や、部屋の様子がわかる写真が増えました。自己紹介文には、在宅時間の過ごし方や、コロナ禍で考えたことなど、より内面的な部分を綴る人が増えました。
これは、心理学でいう「自己開示」が進んだ結果と言えます。自己開示は、人間関係の深化に不可欠な要素です。相手に自分の内面をさらけ出すことで、信頼関係が築かれ、より深い絆が生まれます。コロナ禍は、このような「ありのままの自分」を見せることへの抵抗感を減らし、より本質的なつながりを求めるきっかけになったと言えるでしょう。
「時間的コスト」意識の変化と「真剣度」の向上

マッチングアプリは、多くの人にとって「手軽な出会いの手段」でした。しかし、コロナ禍で私たちの「時間」に対する価値観は大きく変わりました。
在宅時間が増え、自分の内面と向き合う機会が増えた結果、「なんとなく」の時間消費を避け、自分の人生にとって本当に意味のあることに時間を使いたいと考える人が増えました。これは、マッチングアプリにおいても同様です。
「会えない時間」が続いたことで、メッセージのやりとりやビデオ通話に費やす時間が増えました。この「時間的コスト」をかけるからには、より真剣な出会いを求める傾向が強まりました。遊び目的や、ただの暇つぶしではない、将来を見据えた真剣な交際を求めるユーザーが増加したのです。
マッチングアプリ業界もこの変化に対応し、より真剣な出会いをサポートするサービスを強化しました。例えば、結婚を前提とした真剣な交際を希望するユーザーを対象としたサービスや、AIを活用して相性の良い相手を効率的に見つけ出す機能などが登場しました。
真剣な出会いを求めている方には、ぜひゼクシイ縁結びエージェントの過去の記事を読んでみてください。結婚相談所のプロが語る、真剣な出会いの見つけ方や、効果的なコミュニケーション術など、参考になる情報が満載です。
まとめ:コロナ禍が育んだ、新たな「心のつながり」
コロナ禍は、私たちから多くのものを奪いました。しかし、その一方で、私たちは「人間関係」の本質と向き合う機会を得たとも言えます。
マッチングアプリは、コロナ禍という特殊な状況下で、単なる出会いのツールを超え、物理的な距離を超えた「心のつながり」を育むためのプラットフォームへと進化しました。
「物理的な距離」が広がったからこそ、「心理的な距離」を縮めたいという欲求が強まり、 「見せかけの自分」ではなく、「ありのままの自分」をさらけ出す勇気が生まれ、 「時間」の価値を再認識したことで、「真剣な出会い」を求める人が増えました。
コロナ禍で変化したマッチングアプリの世界は、まさに現代社会における人間の心理が凝縮された場所と言えるでしょう。この変化は、パンデミックが終息した後も、私たちの出会いのあり方に根強い影響を与え続けるのではないでしょうか。
